さよならは小さい声で

美容院へ行ったら、マスターに「勧めてくれた本、読んでますよ」と言われた。前回、松浦弥太郎さんのエッセイを紹介したんだった。いつも思う、他人の意見をまず受け入れて、実行までしてくれる、その素直さが、彼の器の大きさのゆえんだと。

 

「さよならは小さい声で」ひとつひとつの話がまるで自分に優しく語りかけてくれているかのような、エッセイ。一人のために書いたラブレターのような言葉。誰か特定の人に向けたラブレターであるのと同時に、その言葉で心が落ち着くということは、ひょっとしたら自分にとってのラブレターでもあるのではないかと思わせてくれる。さらに、自分も同じように、誰かへのラブレターをこうして書きたい、と思わせてくれる。

 

「感想を伝えよう」という話があって、これは私も松浦弥太郎さんから教わった大事な教えだと思っている。例えば何かを紹介してもらった時、何か食べ物をおすそ分けしてもらった時。ありがとうを伝えるのは当然として、どうだったかの感想を伝えることが大事なのだと。感想を聞くことで、また紹介しよう、またおすそわけしよう、という気持ちにもなる。意識はしても、なかなかできなかったりする。そんなことを、マスターはそのエッセイからすぐに吸収し、感想を私に聞かせてくれた。書かれていることを即実行したのだということに気づいたのが、髪を切ってもらって別れた後だったから、少し恥ずかしかった。

 

さよならは小さい声で (PHP文庫)

さよならは小さい声で (PHP文庫)