諦めないで

履き心地の良い、お気に入りの靴ができたので、もう一足買おうと思い、店へ向かう。しかし、迷うことなく、何が何でも買うのだ、と思い立って行った時に限って、フロアー改装中につき売り場がない。この百貨店、なんで自分がいまピンポイントで欲しい紳士靴の売り場のあるフロアーだけが改装中なのか。ただでさえ女性用のモノが多く、男性用のカッコイイものはいつの時も肩身が狭いように感じるのに。

 

諦めようかと思ったけれど、ダメもとで総合案内で訪ねたら、「5階にございます。品数は少ないのですが」新人ぽさを感じる女性は、その新人ぽさをかき消すように堂々と、フロアーの情報をすべて丸暗記をしていて吐き出すかのように、言った。新人から一転、頼もしいお姉さんになった。希望の光が少し見えた。5階に行って、目当ての靴が見つかった瞬間、月並みな表現だけれど「諦めないで良かった~」と思った。

 

今後は、ひとまず案内で聞いてみることにしよう。あるかないか二つに一つなのだから、聞くことで確実に答えにたどり着く。結果、ないのであれば、諦めがつく。一番がっかりするのは、ないと思って諦めた後日、実はあったことを知った時だ。

 

本来はドライビングシューズであるらしいこの靴を、最もそれらしく使わない人間なのではないかと、自分のことを思う。車は、もう1年は運転していない。しかし、履き方はどうだっていい。自分にとってストーリーのあるモノに出会えて、またひとつ、尊敬する松浦弥太郎さんに近づけたような気がして、少し安心する。