帰る場所

 

許す力 大人の流儀4

許す力 大人の流儀4

 

 

タイトルに関係なく、著者の本シリーズは読みやすく、説得力があり、読んでいて力がみなぎる。失礼ながら著者の小説を読んだことがないので、挑戦してみようと思う。

 

「帰る場所がある幸福(p91)」この話が好きだ。どんなことがあっても元旦は兄弟全員顔を揃えて、親に元気であることを報告する。それが当たり前の家のしきたりだった。久しぶりに帰ったときは、特別なにを言うわけではないけれど、元気かどうかは一目見れば分かる。そういうことが幸せなんだと、私も思った。市川や秋葉原の殺人事件。これら猟奇的な事件を起こした加害者に共通している「故郷を出てもう何年も帰っていない」という事実。偶然と片付けてしまえばそれまでだけれど、この事実は強いメッセージを発しているように思う。

 

その一方で、「結局のところ、男は一人で生きるものだ。いずれ生家に帰るなんて甘ったれたことを考えちゃいけない。己ひとりの力で生きるべきだ」と、かつての現場主任に説教されたことも思い出す。あの時は主任もアルコールを浴びていたので、そこに冷静な思考能力があったかどうかは、正直疑わしい。もしかしたらいま、言ったことすら覚えていないかもしれない。でも、それはそれで、納得できる考え方だし、きっと、正しい。

 

「もう実家には二度と戻ってくるものか、と言って飛び出たけれど、巡り巡って故郷に戻ったら、やっぱりいいものだな、と思う。そんな感じかな」LUNA SEASUGIZOがバンド復活についてラジオで言っていた。結果として故郷に戻る、ということが、必ずしも「負け」ではない。定期的に顔を出すことが、必ずしも「甘え」ではない。いまはそう思う。

 

一日の帰郷があり、いま自宅へ。明日からいつもの毎日。「人はさまざまな事情を抱えて、それでも平然と生きている(p188)」この文章に勇気づけられる。