能天気

「足元滑りやすいのでお気を付けください」

「おやすみなさい」

 

最近行きつけになりつつある隣駅のダイニング。帰り際、お姉さんのお気遣いの一言が胸にしみる。普段ご飯食べる場所で聞ける言葉じゃなかったから、一瞬戸惑い、「あ、アリガトゴザイマス」とぎこちない返事しかできなかった。いつもコトが済んでから後悔する。いやでも、今日は主人と会話ができたから一歩前進だ。明日も頑張ろう。相変わらず単純だなぁ。

 

そのダイニングで、まるで別世界に入り込むかのように読みふけるのは最近買った文庫オリジナル長編。平凡なサラリーマンが理不尽な仕打ちを受け、苦悩しながらも、見えない敵と対峙しようとする。その苦悩がリアルで、異次元に飛び込もうとする自分を現実世界に引き戻す力を感じる。その力に抵抗せず、流れに身を任せるのも気持ちいいのだと気づいた。

 

ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

 

 

こういうのを読むと、仕事でストレスを抱えている人はたくさんいて、それに比べたら自分は何も考えてないノーテンキな方なのでは?と少し不安になる。そうであってほしくない。 「『悩みがないことが悩み』なんじゃないのか、お前は」と言われるくらいなら、ストレス抱え込んで死ぬんじゃないかと心配されるくらいがいい。悩みくらいありますよ。行きつけのダイニングですら、スタッフと気楽に会話を楽しむ余裕がない。それが目下の悩みだ。