市川の空気

いま、千葉県の西端、市川市に住んでいて、電車で都内まで仕事に行っている。さすがに都内の仕事にも慣れてきて、地理も覚えてはきたが、やはり仕事が終わって市川市内に入ると、ホッとするというか、そこには穏やかな空気が流れている気がする。決して人が少ないわけではない。比較的最近できた住宅地だし、マンション多いし、朝の駅のホームには人が集中している。夜、帰ってきた時も、電車を降りて改札までの間は結構ゴミゴミしている。これが休日、昼間外に出ると都内とは比較にならないくらいのどかな空間が待っている。

 

市川はよくベッドタウンとして人気と言われるけれど、私にはベッドタウンという意識はほとんどない。市川をベッドタウンとして使ってはいない。都内で働くいま、ただ寝るためだけに帰る街を選ぶんだったら、たぶん市川を選ばない。もともとは確たる根拠があって選んだわけではないから、そんな偉そうなことは言えないが、快適だからこそ別のところに引っ越さないわけだし、便利な都内に引っ越そうとも思わない。休日に遊びに行くにしても、わざわざ都内に行かず、市川市内の喫茶店に行ったり本屋に行ったりしたいと思う。都内に行く必然性のない休日くらい、市内で完結する遊びをしたい。普段行かない都内の店に行くのもそれはそれでいいけれど。

 

タウン雑誌片手に、紹介されている店を見つけながら歩くのが楽しい。そういうのに掲載されてる食べ物、飲み物って、ただでさえ美味しそうに見える。実際に行って食べてみて、それが期待ハズレであってもいい。期待ハズレであることがわかっただけでいい。「あそこは期待ハズレだった。でもここは当たりだ」そういう体験ができるのがいい。たとえば友達と「本八幡でメシ食べよう」となった時に、「じゃぁここに連れて行こう」となるようなレパートリーを増やしたい。ラーメンならここ、居酒屋ならここ、喫茶店ならここ、しっぽりデートならここ、というように、引き出しを増やしていけたら楽しい。

 

美容院のマスターくらいしか地域コミュニティのない私にとって、地域の人とつながる、というのはすごく憧れる。ただ自分だけでその心地よさを満喫してるんじゃぁ面白さは広がっていかない気がする。