本の読みかた

今週のお題「読書の秋」

 

読書をするのに適した季節とよく言うけれど、自分にとって、集中して、かつ快適に本を読める時というのは季節にあまり関係がなく、場所による影響が大きいということに、最近気づいた。

 

例えば、通勤途中の電車内。隙間時間を活用した読書には最適だけれど、どうも文章がすっと頭にはいってこない。もちろん何もせずぼーっとしているよりは有意義だと思うけれど、でもその時間が心地よいかというと正直、疑問だ。スーパーのレジの待ち時間とか、そういうちょっとした隙間時間もそう。つい目の前の列の進み具合が気になってしまう。隙間時間を活用した読書は、効率的ではあっても、決して、楽しくない。

 

 

好きな作家さんの個展があるということで、笹塚の「シャララ舎」へ初めて行ってきた。もともと市川にあったそのカフェが今年、笹塚に移転したのだとか。市川にあるときを知らなかった自分は、好きな作家と自宅からほど近いカフェとのつながりに何かの縁を感じ、またその日は彼女の在廊日ということだったので、勇気を出して行ってみたのだった。

 

「店内では静かにお過ごしください。会話はご遠慮ください」店員さんにくぎを刺され、注意事項を守ってくださいと念を押され、ちょっと緊張しながら扉を開くと、そこには木の家具と雑貨、観葉植物がぎっちりと詰まった空間が。すべてが他の席との関係を遮断したような、そんな配置の席に座り、ブレンドをオーダーする。木の階段を降りると地下室があり、そこに、コーヒーをモチーフにした絵画が並ぶ。青く、静かな世界が、コーヒーを飲みながらくつろぐ空間とリンクする。絵を順につなげるとひとつのストーリーになっているということを後に知る。そのストーリーが、自分とコーヒーにまつわる記憶に染み込んでいく。

 

 

もし集中して読書を楽しむのだとしたら。こういう空間で、「さぁ読むぞ」と意気込んで読むのがいいなぁ、と思う。読書って、そんな特別なことじゃないし、誰だってすることだし、さぁと気負ってすることじゃないけれど。でも、単に情報を得るために本を読むのではなく、その時間自体を楽しむ、そういう読書であれば、ちゃんとそのための時間をつくって、集中するための場所に居て(行って)、よし、と大きく息を吸って、吐いて、読むのが素敵だなぁと最近は思っている。そういう時間を楽しめる自分にとっての大切な場所の一つが、まぁ家からはそう近くはないところに移転してしまったことになるけれど、ここなんじゃないかと思っている。

 

シャララ舎

 

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