昨日、いつもの美容室でマスターに新年の挨拶をした。今年もよろしくお願いします。社会人になり、この美容室の上の階の部屋に引っ越してきたあの日から、もうすぐ12年が経つ。本当に長い時間、そして定期的に会う、数少ない地域コミュニティだ。
そのマスターとまた本の話で盛り上がる。私が尊敬する松浦弥太郎さんのエッセイを紹介したら、興味があるからといって読んでくれるそう。こうやって、他人の意見を真摯に聴いて、素直にそれを取り入れようとする姿勢、本当にすごいと思っている。
マスターが読んでいるという本も教えてもらう。荻原浩の小説から、吉田松陰の教えまで、幅広い。特に、稲盛和夫の本は自分の経営のための教科書にしているようで、革のブックカバーをつけて大事に持っているそうだ。なんでも自分がダメになりそうなときに、読むのだとか。私もそういう、自分の仕事を進める方向へ導いてくれる教科書になるような本に、出会いたい。
いや、教科書はもう、近くにあるはずだ。問題はそれが自分の教科書になりえるということに気づくか気づかないか、だと思う。いま持っている、すでに読んでいる本の中にこそ、本当の教科書があるかもしれない。だからこれからはなるべく本を手放さず、大事に読んでいきたい。
自分なりの、持っている本への愛着を強くする工夫がある。それが蔵書票。以前紙文具屋さんにつくってもらったオリジナル蔵書票(※)を、気に入っている本に貼る。持っている本全てに貼るわけにはいかないから、必然的に蔵書票を貼るに値する本を選ぶことになる。大好きな作家さんの、好きなエピソードのある本。自分を励ましてくれる文章に出会える本。仲の良い友達が一部を書いた思い出の本。これだ、と思って蔵書票を貼った本には、たいてい自分なりのストーリーがある。そうやって、本と自分の物語とをひもづけることが、本に愛着を持たせるうえで大切なことなのだと思った。
(※)
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一方、なかなか読めない、読み進められない本もある。それが、和辻哲郎「風土」「古寺巡礼」。尊敬する建築家の安藤忠雄さんが大切に読んだ本だと知って興味をもったことが、手にしたきっかけだった。同じく尊敬する建築家の光嶋裕介さんも著書の中で、繰り返し読んだと言っていた。自分も読めば尊敬する建築家に近づけるかもしれないと思ったのだけれど、これがなかなか頭に入らない。まだまだ自分は脳が幼稚なのか?そういう本もある。それなのに今日、この二冊に蔵書票を貼り、「永遠に自分の本だ」という刻印をつけた。きっと心の中に、いずれこの本の面白さが味わえる時が来る、そう思える時まで自分の本として懐に入れ続けよう、という想いがあるのだろう。いまは読み進められないけれど、いずれ「自分を形成する本」になる漠然とした予感がある。そんな本もある。
マスターが持っているような、素直に経営哲学を教えてくれる本。そういった本をなかなか読み進められない自分は、まだまだ「株式会社自分」という経営者視点が足りないのかもしれない。肩ひじ張らずに読む小説等ももちろん大事。ただ、自分という一人のオトナを動かす経営者としての心得を授けてくれる本も、ちゃんと読まなければ。
建築という対話: 僕はこうして家をつくる (ちくまプリマー新書)
- 作者: 光嶋裕介
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