夜の国のクーパー

伊坂幸太郎夜の国のクーパー」をいま読んでいる。

 

大好きな彼の小説の中で、これほど買って読むのをためらった作品はないと思う。最初に本屋で見かけて、裏表紙であらすじを読み、パラパラとページをめくったときに、まるで読み終えられる気がしなかったのだ。つまらなそう、というのとはもちろん違うのだけれど、大好きな作家さんで、面白い作品を期待してしまっているからこそ、なんかその期待とは違うんじゃないかという予感がずっとしていて、読んでいなかった。で、「ゴールデンスランバー」とか「マリアビートル」とか「死神の精度」とか、最近では「AX」とか、そういうのを読んできた。「魔王」と「モダンタイムス」を読了したことは、自分にとって少なからず自信につながった。彼の頭の中にある深い宇宙のようなものを体感できたから、次のステップへと跳べると思った。こうして、そろそろ読んでいいだろう、そろそろ読めるだろう、と思えたタイミングで、ようやく手に取ることができた。

  

読み始めて感じているのは、読む前に抱いていた印象そのままに、淡々と、不思議で非現実的な出来事が進んでいくなぁ、ということ。身体をツタに絡まれて動けない男。しゃべる猫。鉄国の兵士。そしてクーパー。これからどう話が進んでどう着地するのか、まるで想像できない。退屈、と言うと口が悪いけれど、そんな時間もありつつ、突拍子もない出来事や描写がさらりと出てくる。読み終えるのにいつにも増して時間がかかりそうな気がするけれど、それを悪いことととらえず、その時間をじっくり味わいたいと思う。

 

そんなことを考えながら、週末、いつものカフェで、少しだけ読んでは飽きて、本を置き、コーヒーと、店主との会話を楽しんだ。昼間に一度行ったら混んでいて入れなかったから、しばらく時間をつぶしていた。立ち寄った本屋で、彼の新刊を見つけてしまった。「あの泥棒も登場」てことは、彼か?また面白そうだ。だけど、いま頑張って読んでいるものがあるんだ。これを読み終えたら買うから、ちょっと待っててね。

 

夜の国のクーパー (創元推理文庫)
 

  

ホワイトラビット

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