フランスの血

二晩連続でワインを飲むという、自分にとってほとんどありえないような二日が終わり、酔いが残った頭をなんとか動かしながらこれを書いている。フランスの血が、体中を巡っている。

 

 

「フランス」という言葉から、ふとフランス映画を連想する。自分にとってのフランス映画は、二つしかない。だいぶ古いけれど、「ヤマカシ」と「ル・ブレ」だ。

 

 

犯罪を犯したいと思ったことはありますか、と聞かれると、小さい声で「実はあります」と答える。しかし実際にやるかというと別の話で、やる勇気もないし、やろうとも思わない。ここでいう犯罪は、その人にとっては正義を貫くための行い、であって、一般的には犯罪なのだけれど、結果オーライに見える、というもの。人を殺す恐れのある殺人鬼を始末するとか、現金輸送車を襲撃して得た大金でホームレスの居場所を守るとか(相棒であったな、そんな話)。そういう、当事者がポリシーを持っている犯罪を、なぜかかっこいいと思ってしまう。

 

「ヤマカシ」を観て、そのかっこよさに震えた。キッカケは、リュックベッソン監督の名前を「TAXI」かなにかで知って、その監督の作品を探している中で出会ったのだと記憶している。ビルから飛び降りる7人の超人が、当時ヒーローに見えた。音楽バカ、遠投の達人、超速男、器械体操の達人・・・それぞれ特技のある7人が、木から落ちて意識を失った少年ジャメルを救うために、心臓移植に必要なお金を富豪から盗む。子供を救うという目的が、盗むという行為を正当化させ、最後に彼らは勝つ。もちろん犯罪はダメ、と前置きしつつ、こういう正義もあるんだ、という善悪の多面性を教えられたような気がした。ジャメルと同じように、正義のために力を合わせて縦横無尽に走り回る7人の超人にあこがれた。これがフランス映画のかっこよさなんだ、と思った。

 

 

巨大な観覧車が空から落ちてきて、地面に衝突し、ゴロゴロと転がってくる。そのシーンに、けっこう衝撃を受けた。フランス語で「弾丸」を意味する言葉をタイトルに冠した「ル・ブレ」。それをテレビで観たものだから、これはすごそうと思い、当時TSUTAYAで借りてはりきって観た。フランスの匂い、色気がプンプン漂ってきて、かつアクションシーンは迫力がある。カーチェイスとか、走って逃げるとか、そいうものはたくさんあるけれど、迫りくる観覧車を避けながら車で駆け抜けるシーンは、当時かなり斬新なものだったと思う。預けられたあたりくじを失くしてしまう主人公の間抜け具合と、迫力あるシーンとのギャップが大きく、興奮した。

 

 

それ以降、自分の記憶に残るようなフランス映画には出会っていない。もともと洋画は観ない方だから知らないだけで、面白い作品はたくさんあるのだろうけれど、この二つの作品以降、自分に入ってこなかったのは、この二つの作品が、自分の男心に火をつけて、消えずにいたからだと思う。お酒に弱く、すぐつぶれる自分は、ワインではなく、二つの映画からフランスの血を取り入れ、肉に変える。