銀河鉄道の夜に包まれた本

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昼間、仕事で経堂へ。経堂に来た時に、立ち寄りたいところがある。商店街にある小さな文房具屋「ハルカゼ舎」だ。

 

ハルカゼ舎は、大好きな紙文具屋「久奈屋」の商品を扱っている数少ない実店舗の一つ。経堂にあると知った瞬間に、行きたいと思った。先客が3~4人いようものなら歩けなくなるんじゃないかといくらい小ぢんまりした店内には、選びつくされた文房具が並んでいる。初めて行って、目当ての蔵書票を扱っていないと知ったときは少し悲しさを感じたものの、置いてある商品のセンスの良さと、にぎやかな商店街の中にある隠れ家感、我が家感が心地よくて、リピーターになっている。

 

仕事終わりに何かないかなぁと思って立ち寄ったら、久奈屋の包み紙があった。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにしたその包み紙には、星空、くるみの化石、観測所などが描かれている。淡い青が幻想的な雰囲気を出していて、さてこれをどのように使ってやろうか、といろいろ想像がふくらむ。

 

包み紙なんて持っていても何も包むものなんてないし、包み方も知らないし、と思っていたけれど、文庫本のブックカバーにも使えると書いてあって、一瞬で手に取った。ブックカバーそのものにはあまり興味はないけれど、好きな紙文具をブックカバーとして使えるならと、ある文庫本がぱっと頭に浮かんだ。

 

文庫版を持っていることに気づかずに単行本を見て、これいいなぁ、欲しいなぁ、と思った本が以前あった。すでに持っている本だと気づいたのは、パラパラとページをめくって読んでみてしばらくしてからだ。表紙のもつ力ってすごいと思った。単行本だと重厚感があってシンプルでかっこいいのに、それを見た後に文庫版を改めて見ると「うーん」と思ってしまうデザインなのだ。だから、自分で包み紙を折ってブックカバーをつくってしまおうと思った。彼のあたたかく優しい文章と星空の美しさがマッチするという自信があった。

 

帰ってきて、文庫本にあわせて包み紙をたどたどしく折り、かぶせてみる。一瞬で本から湧き出る空気が変わったように感じた。と同時に、最初は「あれ、これ文庫本カバーとサイズ違うじゃん。縁の絵が見えなくなっちゃうじゃん」と思ったけれど、実際に折ってつくってみたら、描かれた絵が表紙にさりげなくハマり、感動した。

 

ブックカバーって、その本のタイトルが隠れちゃうし、本棚に入れたら余計その本がわからなくなっちゃうし、いままではつける意味が分からなかった。電車内で読んだりする時に、他人に何を読んでいるのか見られるのが恥ずかしい、といった言葉を聞いたことがあるけれど、自分は少なくとも、他人に見られて恥ずかしいような本は読んでいないと思っている。だけどこうして好きな紙文具屋の包み紙をかぶせてみることで、ブックカバーをつける意味に気づいた。改めて本の面白さは、その書かれている内容だけでは決まらないのだと感じた。