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Spotify

せっかくスマホで高品質の音楽を聴けるのだから、と思ってSpotifyをインストールした。4000万曲以上のデータの中から未知の曲を選んで自由に聴くことができる。音楽を聴くということへのハードルが、ものすごく低くなった。こんなこと、ほんの数年前までありえないと思っていた。

 

これまで音楽は、CDを買わなければ聴くことができないものだった。だからこそ、買ってまで聴く曲を慎重に選んでいた。結果、本当に好きなロックバンドの曲しか買わないという、偏食ぶりが身体にしみついてしまった。栄養失調でそのうち死ぬんじゃないだろうか。

 

スマホという小さな箱の中に入っている膨大なデータのなかから、聴いてみたい曲、好きなバンドの曲を検索してみる。ピンポイントで聴きたい曲がないのはまぁ仕方ないとして、あぁこれも、これもある、この人の曲が気になるんだよな、と次から次へと聴きたい曲がでてくる。7日間だけ体験できる無料トライアルにさっそく挑戦し、試しにアルバムを1つ、ダウンロードしてみる。これはすごい。

 

だがしかし・・・なんだろう、このワクワクしない感じは。良さそうな曲をいくらでもタダで聴けるこんな「ひゃっほー!」な体験、ほかにないはずなのに。なんで、心の底から嬉しくなって、片っ端からダウンロードしてすぐスマホの充電がなくなって困っちゃう・・・とならないんだろう。

 

そうか、タダだからか。身銭を払わずに音楽を自由に受け取ることができる状態では、その音楽のありがたみが伝わらない、ということなのではないか。例えば街中で聞こえる音楽とか、カフェで流れている音楽とか、事務所で仕事中に流れている音楽だとか、そういったものは、良い。それを聴くことが目的ではないから。意識して「この曲いい曲だなぁ」と聴いているわけではないから。それに対して、自らのスマホでダウンロードして、イヤホンをつけて、聴くことに集中しているときはどうか。やっぱり好きな曲を、興味のある曲を、お金を払ってでも聴きたいと思える曲を、全身全霊で、聴きたいと思うんだろう。定額食べ放題だとひとつひとつの料理のありがたみが薄く感じるけれど、それと一緒だ。

 

どうやら「好き嫌いなくいろんな曲を、さりげなく聴く」ことができないらしい。本当はそのくらいの距離感で音楽と付き合いたいという気持ちはあるのだけれど、なかなかそうはいかないらしい。好きなミュージシャンがいて、その人間に惚れて、彼、彼女の音楽を味わいたいと思って、お金を払って、音楽を手に入れたい。そうして、好きなミュージシャンにわずかながらも敬意を示したい。無料でダウンロードする=つくり手の苦労をないがしろにしている、とは思わない。別に買わなくても、聴いて、良かったら人に伝えて、それがどんどん伝われば、結果としてつくり手のためになると思う。だけど、私はどうしても、音楽を買って所有することでその想いを伝えたいと思ってしまう。もっと柔軟に考えられないのだろうか。

 

インストールしたものの結局ワクワクできず、新しい音楽を発見するという楽しみ方は自分には不向きだと捉え、無料トライアル期間中であるにも関わらず、最終的にはアンインストールするに至った。ほんと意味ない。選び放題、食べ放題は自分には合わないという気づきだけ得られた。