あるキング

 

あるキング: 完全版 (新潮文庫)

あるキング: 完全版 (新潮文庫)

 

 

昨日のあれだけの憂鬱も、時間が解決してくれる。時間さえ経てば、「もっと凹んで、もっと反省したほうがいいんじゃないのか?」と思うくらい、なんでもなくなる。そんなもんだ。問題がまるでなくなった、というわけでは決してなく、まだまだ課題はあるけれど、こうして目の前の問題をちょっとづつやっつけながら、一歩一歩進んでいくしかないのだろう。「目の前の危機を救えない人間がね、明日世界を救えるはずがないんですよ」伊坂幸太郎さんの「砂漠」にでてくる西嶋の言葉が脳をよぎる。ちょっとオーバーだけど、そんな気持ちだ。

 

だから仕事のあと、ちょっと気持ちが緩んだ自分を認めてあげよう、日曜日、寝るまでのひとりの夜を有意義に過ごそうと、いつもの本屋へ寄り、今日は本を買って、目の前のパスタ屋のドアを、今日は堂々と、開けた。昨日、そのドアを開ける勇気がなかったことがうそのようだ。笑顔がめちゃ素敵な店員さんの目は、今日もめちゃ細い。「閉店時間、一時間早くなったんですね」「そうなんですぅ、働く方としても寂しいんですぅ」「なんで?」「だって、働ける時間が短くなっちゃうじゃないですか。まぁ早く帰れるのはいいんですけれど」真面目か、あなたは。

 

弱小球団「仙醍キングス」をめぐる話。ゆるやかに始まるストーリーがこのあとどう展開していくのか、楽しみ。雑誌版、単行本版、文庫版と、同じ話を3つの違う書き方でまとめた、というのも面白い。

 

本編を読み始める前に、挟まっていたデビュー15周年記念特別掌編「書店にまつわる小噺あるいは、教訓の得られない例話」を読んだ。ものすごく短い話の中に伊坂幸太郎さんらしいマジックが凝縮されていて、思わず声をあげた。すごすぎる。