本を買うことへのハードル

せっかく念願の壁面本棚をつくったのだからと、まぁ特に意気込むつもりもないけれど、自ずと駅前の書店に向かう足が軽くなる。しかしここで、元々のなかなか即決できないタチが災いする。本屋に入って、これを買おうという本にたどり着かない。

 

こういうときの行動は、大きく分けて二つある。ひとつは、今日は本を買う気分じゃないと諦めて店を出る。もう一つは、決めるまでウロウロする。今日は、後者だった。しかしその決まるまでの時間が、やたら長かった。

 

買わないなら買わないと決断すればいいのに決断できず、結局本屋で、それも2分あればひととおり店内の本棚を見て回れるくらいの規模の本屋で、30分くらい行ったり来たりする人なんて、自分以外にいるだろうか。本なんていつだって買えるんだし、今回ハズレでもまたすぐ次があるし、それなりに何か新しい文章を読みたい気分にもなっているんだし。それでもこれと決まらず、あれでもないこれでもない、となる。だいたいが、「これ買っても、読みきれないだろうなぁ、面白いと思えないんじゃないかなぁ」といった、不安で棚に戻されることになる。

 

買う本に対するハードルが、高いのかもしれない。自分が選ぶ本には自分なりのちょっとした基準がある。それは、「一瞬で読んでおしまいじゃなくて、例えば1ヶ月後、1年後、10年後に読んでも楽しめるか」というもの。そのときの瞬間的な流行みたいなものを読んで終わっちゃって、1ヶ月もしたら読まなくなるというのではつまらない。ジャンルはなんだっていいけれど、そこに新たな発見や刺激があって、それが一定期間風化せず自分を満たしてくれると思える本じゃないと、あんまり買いたくない。そんな基準が頭にあって、もしかしたら大半の本をふるい落としてしまっているのかもしれない。

 

あと、最近は特に自己啓発的な本を読む意欲がなくなっている気がする。興味がないのではない。読みたいとは思う。読んでそれを仕事に活かしたいとも思う。そういう知恵が得られるビジネス書もいっぱいあると思う。だけどそれを手に取ってレジに行くまでに至らないのはなぜか。たぶん、①「あぁ、いままでそれができてなかったから悪いんだなぁ」と自分の非を指摘されているように感じて、落ち込んでしまいそうで怖いから。②「それができれば苦労はしないよ。できないから問題なんじゃないか。それができるようになるためにはどうしたらよいのかを教えてくれよ」というように、書かれていることでもなお解決できないくらい自分の仕事力が足りていないと気づいてしまいそうで怖いから。この二つのどちらかだろう。いまの自分には、ビジネス書は刺激が強すぎる。言っていることが役に立たないとかそういうことではなく、まったく逆で、役に立つんだろうけれど、こうせよというメッセージの力が強すぎて、実践できない現実とのギャップに打ちのめされてしまいそうで、怖い。

 

もっと気軽にいこうよ。別に誰に強制されて読むものでものないし、つまらないものを無理やり読むことほどつまらないものはないんだし。そう思うのだけれど、いまだになかなか本との距離感は詰まらない。