そして生活はつづく

いろんな職業がある人って、かっこいい。やりたいことを片っ端からやっちゃう人って、かっこいい。たくさんの顔を持つ人に憧れて、自分もそうでありたいと思って、好きなことを好きなようにやって、でも、ちゃらちゃらしているのかというと決してそうではなく、真面目そうで、誠実そうで、一生懸命に見える。なにより、芯がとおっている。こういう人を、私もかっこいいと思う。

 

そして生活はつづく (文春文庫)

そして生活はつづく (文春文庫)

 

 

彼は自分よりやや年上なのに、同い年か年下かと思わせるくらい童顔で、子供っぽさをもっているように見える。それはガキっぽい、というのとは全然違って、童心をもっている、といった方が近いか。とにかく、自分はどういう人間で、自分は何が好きで、自分は何が苦手で、といったことをちゃんと把握している。そしてそれを面白く伝える。文筆家っていう肩書きを聞いたとき、最初は「そうだったの?」と思ったけれど、このエッセイを読んで、納得。丁寧に、文章を書く方だなぁ、と思う。

 

ブルースブラザーズのダンエイクロイドに憧れたとか、細野晴臣に憧れたとか、そういう彼にとっての根源的な話を聞くと、自分も他者から影響を受けて成長していくことが大事なんだということに気づかされる。

 

お金を使うのが大好きで、口座振替が嫌い。お金はサービスを受けた対価として、感謝しながら直接渡したい。CDも、中古で買ったのではお金という賛辞が作り手に届かないから、新譜で買う。この話から、彼がどういう方なのかを改めて知り、彼のことが好きになった。すみません、曲はほとんど聴いてないけれど、エッセイから湧き出る彼の正直度に、打ちのめされた。

 

この間、クレジットカードの請求明細の中に身に覚えのない請求先がいくつかあって血の気が引いた。どうやら海外の集金代行会社らしい。怪しすぎる。きっとこれが何かの合図なのかもしれない。クレジットカードという、現金という形でサービスの相手に賛辞を送れないツールと、ちょっと距離を置くべきなのかもしれない。そう思いながらも、きっと離れられないんだろうなぁ。