雨の用賀

ピースの又吉直樹さんの本「東京百景」が面白くて、風呂の中でぼんやりと読んでいる。東京の街と、そこでの思い出、エピソードが、彼らしい観察眼で語られている。こうやって、街と出来事とが結びついてできる思い出の蓄積が自分をつくっていくのだと知り、じゃぁ自分にとっての思い出の街はなんだろう、という疑問が浮かぶ。又吉さんの文体を勝手に参考にしながら、自分と街との関わりあいについて、振り返っていけたら良い。

 

 

午前中、家を出るときは小雨だったのに、着いた時にはその雨は強さを増し、いつもに増してテンションを下げてくれる。仕事中に気分が暗くなるのは嫌だなぁと思うのだけれど、それでも雨も、風も、やんでくれない。

 

いま一緒にプロジェクトを進めている方に書類を渡し、食事をご馳走になった。「以前はここでサラリーマンやってたんだよ」というその方は、いまは独立して忙しく歩きまわっている。今回のプロジェクトを通して、いろいろ勉強させてもらっている。この縁をきっかけにして、別の仕事を生み出したいと思う。

 

その後、別の方と会う約束の前に少し時間があったため、瀬田方面へ歩き出す。強くなった雨は容赦なく、お気に入りの靴を濡らしてくれる。ちょっと歩きたくないなぁ、と思っていたところで、ふと、フレッシュネスバーガーが視界に入り、一瞬で気が緩んだ。一度入ったことのある店って、やっぱり親近感があって、たいていはまた入りたいと思う。私にとって用賀といえば、このフレッシュネスバーガーなのだ。特にハンバーガーを食べるわけではなく、ただコーヒーを飲むだけなのだけれど、マクドナルドやモスバーガー、ケンタッキーなどのいわゆるファストフードとはちょっと違う、ややスロー感があって、結構好きなのだ。

 

テーブルまで運ぶのが大変なくらいなみなみとつがれたコーヒーを飲んでいたら、自分にとっての用賀と思い出がくっついた。以前、営業でビジネススクエアに何度も足を運んだ、それくらいの想いしかなかった。その用賀を端的にあらわすものが、フレッシュネスバーガーのコーヒーとマドラー、そしてキャラメルのように紙に包まれた角砂糖なのだ。

 

そのあとの仕事が、うまくいったか。決してうまくは行かず、反省点が多かった。きっと、雨のせいだ。

 

東京百景 (ヨシモトブックス)

東京百景 (ヨシモトブックス)