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歩く

 

7月12日。日曜日。

 

夕方、重い腰を上げて、外へ出る。

 

「オトナの」で映画監督の押井守さんが、「仕事のないときは、なにも考えない方がいい。気持ちいいことだけをやって待っていたほうがいい」と言っていた。なるほどな、と思っていた。それを、自分に都合の良いように解釈し、まるで頭が働かずぼんやりしている自分を正当化するように解釈し、ただ楽しい、心地よいことだけを考えながら、街を歩く。

 

尊敬する松浦弥太郎さんが、悩んだら、とにかく歩く、と言っていた。誰かと一緒なわけではないし、音楽を聴くわけでもないし、景色だって、見ているようで見ていない。そのことを知り、それもいいな、と思い、とぼとぼと目的もなく、歩き始める。

 

 

日曜日の夕方というのが、一番憂鬱な時間帯だ。明日から、仕事が始まる。考えないと先へ進まない業務が、たくさんある。気が滅入るような顧客からのメールにも、対応しなければならない。もちろん気が重くなるようなメールを送られた、その原因は自分にしかなく、まぁまさに「身から出た錆」なのだろうけれども、どうもこの憂鬱に、悩まされる。だいたい、受信ボックスにメールが入ってくる、あの太文字フォントと括弧書きの数字をみて気が沈む時点で、働き方をもっと考えたほうがいいよ、と思う。

 

明日からの仕事のことを考え始めるとキリがなくてよくないし、かといって、ただ無心に気持ち良いことだけをやっているとあっという間に時間が過ぎて、明日になってしまう。明日になる前の楽しみをとっておきたいのだけど、それがひとつひとつ、確実に減っていくのが、怖い。どんなに嫌がったって明日は来るんだから、開き直って明日の準備をしちゃえよ、という心の声も聞こえる。だけど、それが、できない。つくづく、建設的でない。

 

街のケーキ屋で、とてつもなく美味いケーキとシュークリームを買い、帰って食べる。こうしてまた一つ、平日が始まる前の楽しみが減っていく。

 

(文庫)軽くなる生き方 (サンマーク文庫)

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