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6月20日。土曜日。

 

仕事終わり、ラストオーダー直前に行きつけのパスタ屋に駆け込む。度々登場するこのパスタ屋、特別な料理があるわけでも、ものすごいおもてなしがあるわけでもない、いわゆるチェーン店だ。船橋ららぽーとにもあるようだし、都内で言えば、今日仕事で行った仙川にも、ある。でも、私にとっては、特別な店なのだ。ここで、松浦弥太郎さんの本を読みながら、パスタを食べる。だいたいいつも同じ時間。だいたいいつも、同じ席。この場所が、彼の言うところの「避難場所」であり、この時間が、目の前の出来事を追いかけるだけで日々が過ぎないように立ち止まらせてくれる、自分を見るための時間なのだ。

 

このところ、軽いエッセイを読みたい気分。だから、くちぶえサンドイッチ。

 

くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎随筆集 (集英社文庫)

くちぶえサンドイッチ 松浦弥太郎随筆集 (集英社文庫)

 

 

千駄ヶ谷アフタヌーンティーで1年間無料配布していたエッセイを集めた「くちぶえサンドイッチ」が、とても読み心地が良い。具体的なことを言うようだけれど、特に32(p293)が、大好き。共感しか、できない。仕事に忙しい時こそ、ひとりでふらっと喫茶店に入りたくなる。入って、何か心の中で燻っている異物のようなものを、取り除きたいのだと思う。

 

「そこには、可愛くて、きれいな女の子が数人働いていて、いつも元気良く、いつも感じ良く、とてもうれしいのです。それは正直な気持ちです」本当にそうだと思います。私も、まったくそのとおりです。このお店の店員さんは、まぁ普通に可愛いな、っていうオトコ目線ももちろんあるけれど、とにかく感じが良いのです。別におだてでもなんでもなく、正直な気持ちです。

 

「そうやって働いている姿を見ていると、いや、じっとは見ないけれど、なにげなく見ると、ああ、ぼくも頑張ろう、なんて単純に思ってしまうのです。男子ならみんなそうなんじゃないかな」そうです。私も、まったくそのとおりです。もし他の男子みんなが「それは違うよ」と言ったとしても、私だけは、そうです。じっと見てたら不審人物扱いされちゃうから、外をボーッと眺めるフリして、実はガラスに映った働いている姿を見ていたりするのです。

 

「そして、特別な一言、たとえば「いつも、ありがとうございます」なんて言われれば、実はとびきりにうれしかったりするのです」まったくもって、そのとおりです。胸がはちきれそうなくらい嬉しいです。ポイントカードにスタンプを押してもらって、受け取るときに、「いつも、ありがとうございます」なんてとびきりの笑顔で言われたものだから、胸にズキンと響いて、「こちらこそ、いつもごちそうさまです」の一言が言えなかったです。

 

こうして、明日も仕事あるけれど、頑張ろうか、という気持ちになるんです。単純だなぁ、と言われそうだし、自分でもそう思うのだけれど、これが正直な気持ちです。