暮らしに花を・・・

2月8日。日曜日。

 

起きたら雨が降っていたので、事務所に行くのをやめる。マッサージ屋に電話したら、担当者が不在とのことで、銀座に行くのもやめる。行きつけの本屋に寄ったあと、向かいのパスタ屋に飛び込んだ。夜に行くことばかりで、昼間に行くのは初めてか?お気に入りのコースのなかにも、ちょっとは変化をつけたりしてみたいものなのです。

 

 

小説コーナーに、直木賞作家の西加奈子さんの小説が並んでいた。ピースの又吉さんも「第2図書係補佐」のなかで彼女の作品を取り上げていたり、帯にはいろんな人の推薦文があったりして、読んでみたいという好奇心にかられる。それでも、レジに持っていくことができなかったのは、読んでもし感動しなかったらどうしよう、という恐怖があったから。感情移入しすぎて翌日仕事にならないから小説は読まない、という人がいたけれど、私は完全に逆。楽しめるとは思うんだけれど、もし何とも思わなかったらどうしよう、自分は人の心の機微に鈍感な、不感症人間なのではないか、という恐れから、みんなが絶賛する小説を読むハードルが、どうしても高くなってしまうのだ。

 

 

やっぱり気軽に読める、なじみの著者の本がよい。そう思って手にとったのは、松浦弥太郎さんの「あたらしいあたりまえ」。彼の美しいイメージと、パスタ屋の居心地の良さが、もう完全に結びついている。

 

あたらしいあたりまえ。  暮らしのなかの工夫と発見ノート (PHP文庫)

あたらしいあたりまえ。 暮らしのなかの工夫と発見ノート (PHP文庫)

 

 

「雨の日は花を買う」とあった。なんで雨の日に買うんだ?と思っていたら、なるほど、自分みたいに暗い気持ちになったら、昼間から部屋の明かりをつけるんじゃなくて、花を生けて明るくしよう、というもの。そういう、自分だけかもしれないけれど、自分にとっては日常的になっている「あたりまえ」があるのも、良い。

 

 

先日行った美容院で、マスターに、このパスタ屋が行きつけであることを告白したら、彼もそうだと聞き、驚いた。しかもマスターは、そこではビールしか飲まないのだという。パスタ屋なのに。そして、彼も私同様、美人の店員さんに目が釘付けなのだとか。ビールしか飲まないおかしな客として、店員さんに覚えられているかもしれないのだとか。そんな彼のこだわりを聞きながら、そういう過ごし方もあるのか、と感心しながら、自分と同じように美女を見ている彼に嫉妬しながら、じゃぁ自分にとってのあたりまえな過ごし方はなにか、と模索する。

 

自分は・・・けっこう長時間、本を読みながら、ドリンクバーのコーヒーをたくさん飲みながら、窓からテラス席の向こうの鉢植えのオリーブを眺めながら、過ごしている。パスタのセットだけだと手持ち無沙汰になるので、ここ最近はミニピザを追加してしまう。松浦弥太郎さんの言うところの「腹六分目」は、残念ながら真似できていない。

 

 

帰りがけに、家の目の前の花屋で花を買った。直感でこれと選んだら、菊だった。「グラジオラス」と書かれた花瓶に入っていて、ラグタイムの「グラジオラスラグ」が思い浮かんで、じゃぁグラジオラスにしようと思って店員さんに言ったら、「あっすみません。それ混じってました、グラジオラスじゃなくて、マムって、菊ですね」と返される。菊を見てグラジオラスだと思い込むなんて、どんだけ音痴なんだ。

 

帰って、生けて、冷静に「でも菊って、お供えのイメージが大きいから、あまり良い印象ではないよな」と思ってしまった。それでも調べてみて、実は縁起のいい花だと知り、ほっとした。