会議を適切に進める技術

竣工済みコーポラの管理組合総会に参加することが多々ある。管理組合との間でコーディネート業務委託契約を結んでいるので、例えば予算案や修繕計画に対してアドバイスをする、という目的がある。建物の管理については管理会社に任せているけれど、その管理会社の契約業務が適正に行われているか(具体的には・・・日常の清掃が行き届いているか、設備点検の報告がきちんとなされているか、など)を、設計者の目でチェックをするという目的もある。

 

コーポラの入居者は、特に建物の維持に対しての関心が高く、主体的に良くしていこうという意識をもっているように思う。それが、自分たちが施主となって工事を発注し、つくりあげていくコーポラの進め方のひとつのよいところだと思う。

 

吉祥寺のプロジェクトの臨時総会に出席して、そのことを改めて感じた。出席者みな、建物全体を維持していくこと、よりよくしていくことに対して他人事とは考えていない。みな自分のことのように考えている。議論の中で設計者、施工者が矢面に立つこともある。けれど、もし入居者が無関心であったとしたら、そういうこともないんだろうな、と思うと、入居者の意識の高さの裏返しなのだ、ということが分かる。いわゆる分譲マンションの管理を多数行ってきている管理会社の担当者が、「全員の決をとることがこれだけすんなりいく、というのは極めてまれです」と驚いて言うくらいだ。入居者も、管理組合員同士の意思疎通がうまくいっているということに自信をもっていいと思う。私も、そうした集合住宅を供給している立場であることに誇りを感じる。

 

こうした総会に参加するにあたっては、なるべく参加者みなの意見を、黙ってじっくり聞く、ということを心がけている。当たり前だと思われるかもしれないが、これが意外と難しい。私は自分の弁にまったく自信がなく、黙っているよりしゃべる方がストレスを感じるが、それでも、議論の中で「ここで反論したい」「ここで裏付けの具体例を提示したい」といったタイミングがあると、冷静さを欠いて、つい言葉が出てくることがある。そういうときに出てくる言葉はたいてい、自分の頭の中で整理しきれておらず、全体の議論にたいした影響を及ぼさなかったり、蛇足であったりする。

 

議論がなされているときは、「いま何が問題になっていて、それに対する答えとして何を言っているのか」という点に注目して、よく話を聞く。そして、それが総会の議題への回答へ繋がっているかどうかをよく考える。意見がいろいろ出る中で、立場上、意見というか、助け舟を求められるタイミングが必ずある。そのときに、言うべきことを整理して、言うべきでないことは一切言わず、回答する。そんな立ち位置が、理想だ。難しいけれど。

 

昔から、会議の議事録をとるのが苦手だった。その瞬間瞬間は、何を言っているのかは理解できる。議論がなされているその最中は、要点をまとめることができる。しかし、会議が終わったあとに要約して、「こう議論が進んで、結論はこうです」と端的にまとめて報告する、ということが、私の場合、なぜか難しい。細かい話題に振り回されて、軸となる意見を伝えるということができないのだ。これをなんとか改善したい。

 

そして、会議の内容を手短に報告する技術を身に付けたうえで、最終的には会議を適切に進めるファシリテータとしての技術を身に付けたい。議論されている内容をまとめるだけでは、傍観者と同じである。きちんと結論にたどり着けるように自分で会議をコントロールする。そういうことができたら、いい。