「鍋の美味しい時期になったなぁ」仕事帰り、イオンの食料品売り場で一週間分の食料を調達しながらふと思う。鍋コーナー・・・ホントにスーパーは消費者の心をつかむのがうまい。

 

はたして鍋のなにが魅力なのか、きれいに説明できそうにないのだが、それは一人で食べる時ではなく、友達みんなで囲む時の楽しさのなかに答えがありそうな気がする。自分だけがその品を食べるアラカルトと違い、みんなが同じ鍋の食材をつつくというところに、仲間意識というか同調意識というか、とにかく食事を共にしているという安心感があるんだろうな・・・そう考えながら、さっき買ったキムチチゲ鍋を一人で食べてるんだから悲しいものだ。いや、これはこれでいいものですぜ。

 

一年半前、大学時代のサークル同期を全員集めての鍋同窓会を企てた。大所帯でつつく鍋は非常に温かく、まだ寒さの残る4月の心と身体をほぐしてくれた。普段クールで物静かな男が二次会のカラオケで弾けるのを見て、企画してよかったと心から思った。みんなそれぞれ苦悩あり、疲れあり、ストレスあり、挫折あり、そんななかでも頑張っている。隣の芝は青く見えるとはよく言ったもので、みんながみんな、少なくとも自分よりは人生をエンジョイしているように見えた。うらやましかった。その気持ちが、「じゃあ自分も。じゃぁ明日からは」と意気込む糧になった。もしかしたら鍋には「明日への気力」が溶け込んでいるのかもしれない。

 

「ごちそうさま。美味しかったです。また来ます」と何気なく言ったら、「『また来ます』いただきやした~!!」と店内に響き渡る大声で店員が叫んだ。それを聞いて、絶対にまた来ようと思った。サプライズ用の巨大パフェ同様、店員の声も器量も大きい。また友を集めてやろうと目論む。