東京マラソンが繋ぐ一日

2月26日。日曜日。


AM:いつもの美容院


ぼく「今日東京マラソンっすよ」


マスター「そうそう。あっこの間、朝走ってる時に会いましたよね」


「そう。だからもしかしてマスター今日東京マラソン走ってるのかな、なんて思っちゃった。なに、いつも朝走ってるんですか?」


「いや、いつもじゃないんだけど。休みの日はね。今日はこれから出かけるんすか?」


「いや、特に予定は。いま東京行ったら、それこそカオスだからね。行かない方がイイ」


「いま、仕事は忙しいんですか?」


「そうですね・・・この2月3月で引渡の物件がいくつかあって、検査だとか内覧会だとかがあるんで、ちょっと忙しいですね」


「そうなんすか。ぼくの友達がマンション買ったんですけど、棟内モデルで使われてた部屋を買ったら他の部屋より少し安かったらしいんですよ。そういうもんなんですか?」


「えっ?いや、よく分かんないですけど、棟内モデルに使って販売員とかの事務スペースとして使ってた部屋だとしたら、若干は安くなるかもしれないですねぇ(無知)」


「その友達、モデルの部屋だったんで、家具とかつけてもらったらしいですよ」


「へぇ、それはいいですね。で、素朴な疑問なんですけど、例えばマスター、東雲とかのタワーマンションの高層階に住んでみたいって思いますか?」


「そうですねぇ・・・エレベーターの待ち時間が少なくてスムーズなら、住んでみたいとは思うかな」


「そんなもんなんですかぁ。いやね、東雲とか豊洲とかのタワーマンションとかがいま即日完売になるらしいんですけど、ぼくああいうのに住みたいって全然思わないんですよね。60階とかにいて去年みたいな地震が来たらそれこそパニックですよ、きっと。ただでさえ湾岸の埋め立て地なのに」


「そうですねぇ・・・確かに。ぼくの場合はエレベーターの移動がスムーズにできないとイライラするかな。60階に行こうとして一緒に乗った住人が例えば3階で降りたら、『階段使えよ』って思っちゃう(笑)」


「そりゃそうっすね(笑)とにかく、タワーマンションが何百戸ってすぐ売れちゃうのに、一方で目黒とかの一等地であっても、総戸数8戸とかの低層長屋の入居者がなかなか決まらないとかっていうのを聞くと、なんか世の中不公平だなぁって思っちゃうんですよね。どう考えたって絶対低層住宅の方がいいでしょう?」


「まぁ・・・人それぞれですからねぇ・・・」



PM:壊した腕時計の修理のために新宿



コルトンプラザに修理に出していたところ、電話がかかってきて事務的に一言


女性「あのぉ、先日お預かりした時計ですが、問い合わせたところ修理不可ということでした。ご返却いたしますので、都合の良い日に取りに来ていただけますか」


「(心の声)なにぃ??そんな結論、もう少し早く出せよ」


こうして受け取りに行った腕時計を、そのまま新宿のヨドバシカメラへ持っていく。一つは昔ここで買った腕時計だし、ここなら修理できるだろう。つい数時間前、東京マラソンのスタート地点で3万人が集結していたここは、レースも終わり、いつもの賑やかな日曜日の新宿に戻っていた。


店員「あぁ・・・ピンが錆びて詰まってますねぇ。もう一つは・・・ガラスの傷ですか。これはガラスの交換になりますねぇ。いずれにしても、見積ということで、2週間ほどでご連絡致します」


「まじか、また2週間かかるのか・・・先は長いな」


一つは昔から使っているお気に入りで、何度も修理に出していてそろそろボロが出てきている。もう一つは、この間雪が降った日、仕事中に歩きながら電話をしてたら滑って転び、思いっきりケータイを持ってた左手の手首を地面にこすり付けてしまった。ハッと気付いたら時すでに遅し、左腕に巻かれた相棒の顔は、見るも無残で、まるでドリアンに火薬をぶつけられて皮膚が剥がれた愚地独歩の顔面を見た時のように衝撃的だった。いやむしろ、スペックに爆弾を口に入れられ、爆発させられたにもかかわらず、「まだ、やるか」と言って立ち続けた花山薫の顔面を見た時の清々しさ、と言った方が近いか。


腕時計好きとしては、そんな彼らを放ってはおけず、こうして修理に出す。花山薫の復活を心待ちにしている。



NIGHT:大学時代の友達と秋葉原で飲み会


場所が秋葉原であることについては特に根拠はない。ふたりの住所をつなぐちょうど中間地点といったところか。わざわざ若者文化の街、アキバに来て、ただ居酒屋に行って飲むだけってのもどうかと思うが、それもまたいい。


このブログにも度々登場するこの友達はかなりの勉強熱心で、いつも会うたびに刺激を受ける。環境建設学科出身のこいつより建築の知識が乏しい建築学科出身のぼくはいったいなんなんだ。


でも、彼と話をし、彼の大学卒業からいままでのことを聞くと、仕事に対して、そんなに深刻に考える必要もないのかな、と少し気が楽にもなる。深刻に考える必要がない、というより、もっとわがままであってもいいのかな、と。


久々に会い、若干真面目な話もし、くだらない昔話もし、いつにも増して食べ過ぎた感が否めない。


東京マラソン完走から2年。リベンジへの道は遠ざかる。