メール断食

「迷惑行為防止のため、車内にて私服巡回をしております。ご協力をお願いします(機械的な枯れ声)」いつもとちょっと違う、そんな内容の電車内アナウンスを聞き、一瞬で読んでた本の内容を忘れてしまった。以前なにか重大な迷惑行為をした客がいて、その迷惑を被った客がクレームを言ってきたのか?

 

それにしても、私服巡回にどんな効果があるのか。そんな姑息な手段を使わないでも、堂々と「係員でぇす。みなさんが迷惑行為をしないよう、見回りをしておりま~す。ご迷惑をおかけしますぅ」とでも言って各車両を歩いて回ればいいじゃないか。その方が迷惑行為をする人も「わざわざそんなことのために歩き回るくらいなら、迷惑行為をやめよう」と思うだろう。それに、迷惑行為をする人はたぶん迷惑行為をしているという実感がないから、どれだけアナウンスして巡回しても無駄ではないか。そもそもここで言う迷惑行為とはなんだ?シートでご飯食べる人か?化粧をする人か?それともシート4~5人分くらい占拠して横になる酔っ払いか?そういう人に出くわしたら、ぼくはすぐさま車両を変えるから、巡回しようがしまいが正直どうだっていい。いっそ、そういう人が乗ってきたら、車両にいる他の人全員が一斉にその車両から逃げるようにアナウンスすればいいんだ。「電車内でご飯を食べ始めるお客さんがいましたら、皆さん、特に座ってるかたには大変お手数ですが、全員隣の車両に移動してくださいますようお願いいたします(ここは機械的でなく心をこめて)」とか。一瞬で一人ぼっちになったら、絶対当事者は反省すると思う。

 

そう考え終らないうち、次のアナウンス。「車内では携帯電話での通話はご遠慮ください。また、混んでる車内では、極力電源をお切りくださいますようお願いいたします(機械的な枯れ声)」前の文はまだ理解できる。また、例えば「優先席付近では電源をお切りください」ならよく聞くし、理由も分かる。だけど、抽象的に「混んできたらなるべく電源を切ってください」と言われると、切らなきゃならないタイミングが分からない。なんでもとりあえずやってみよう、というのが信条であるぼくは、南砂町あたりで混んできたのを合図に、律儀に電源を切ってみた。そもそも地下だから切っても何のデメリットもないし。そしたら意外に気分が楽になったから不思議なものだ。よく「ケータイが手放せない。肌身離さずもってないと不安を通り越してイライラする」という人がいると聞くが、すくなくとも自分には当てはまらない。その意味では、このアナウンスには多少の意義があったと思う。たぶんそのアナウンスを機に電源切ったのはぼくだけだろうけど。

 

 

そんなIT浸透社会・ニッポンで、それだけITが浸透していることに、またそれに依存していることに、まったく気づかずに日々を過ごしてる人も多いのではないか。

 

暑さ和らがない土曜日。行きつけの駅前の本屋で適当(適切という意味)な本を見繕い、そのまま道路を渡って目の前のパスタ屋に入る。けっこうこじゃれていて快適、テラス席もあってキレイなそのパスタ屋は、チェーン店なのか個人店なのかも不明だが、なかなか居心地がよく、ハマりつつある。本屋とイタ飯屋。ドアtoドアで5秒のこの組み合わせが絶妙。

 

買った本はこちら。

 

「IT断食」のすすめ (日経プレミアシリーズ)

「IT断食」のすすめ (日経プレミアシリーズ)

 

いまは「ITがないと仕事にならない」とフツーに言えてしまう。そういった時代だから「何がIT中毒だ」と反論したくもなる。しかしそうじゃなくて、「ITはまだまだ発展の余地が大きく、今後もうまく付き合っていかなければならない(中略)だからこそ、ITの弊害に今こそ目を向けなければならない」。

 

自分に当てはめてみると、もはや依存症を越えてるレベルである気がする。就業時間8時間のうち、9割5分、つまり7時間半くらいはパソコンとにらめっこしてる気がする。おおげさでなく、依存症だろう。

 

この本を読んで、一度IT断食してみる価値は十分にあると感じた。例えば「ノーメールデイ」とか「CC禁止」とか、そうやって無条件に一度断ち切ってみることで、本当にそれが必要かどうかを考えるきっかけになると思う。だいたい、メールがないと機能しない仕事って時点で、けっこうあやうい仕事の仕方だと思うし。相手が読んで理解しているかどうか確認しないと分かんないんだから、2度手間にもなりうる。単純に効率がいい、とは言えなさそう。

 

ぼくは受信トレイの未読件数を常にゼロの状態にしないと不安だ。受信したら、とりあえず読んで既読にする。それなのに、送受信して新規受信メールがなかったら、それはそれで少しさびしさを感じる。受信メールの多さが、自分の仕事の充実度、会社に対する貢献度をあらわしているような感覚になる。これは明らかに依存症だ。意識してメールを断ち切る時間を作るというのは、もしかしたらすごい効果があるかもしれない。