珈琲工房 HORIGUCHI

7月3日。日曜日。



昼過ぎに家をでて、千歳船橋へ。



初めて降りた、世田谷のおしゃれな駅。



用件を済ませ、目的の喫茶店へ。



「HORIGUCHI COFFEE」



駅の目の前にある喫茶店の入り口には、「堀口珈琲」と刻まれた立派な木の表札。



そのあまりの立派さに、道を隔てて隣に構えるサンマルクが今日は貧相に見えた。



店内に入り、目の前を横切るカウンターに座り、アイスコーヒーとケーキのセットをオーダー。



目の前でコーヒーを淹れる様子は、本格的だった。



本を読みながら、コーヒーを淹れるところをチラチラ見るぼくに、たぶん店員もうろたえていただろう。



日替わりタルトを一口食べてびっくり。



想像以上のうまさにあやうく声出しそうになる。



店内の落ち着いた雰囲気も味方して、読書にも集中できないほど眠かった。



結局、ほとんど本を読めず、ボーっとしたまま店を後にした。



そのせいで店の写真を撮り損ねたことが、汚点だった。



もう一つ、雑誌に載ってて行こうと思っていた千歳船橋の喫茶店が、探しても探しても見つからない。



よく住所をみて調べると、それは「千歳烏山」駅の近く。



しかし雑誌には確かに「千歳船橋」駅と記載。



雑誌の情報が必ずしも正ではないということを思い知らさせる。



千歳烏山までわざわざ行くのはためらわれたため、予定変更し、下北沢へ。



雑誌に載ってる喫茶店を探して、若者の街をブラブラ。



「なんでわざわざシモキタに来てここでバッグ買ったんだよ!」と自分でツッコミ入れたくなるほろ苦い思い出の地、ジーンズメイトを過ぎて、若者がひしめき合う路地を越えて、目的地へ。



しかし、やはりそこに目的のものはない。



見上げると、喫茶店があるはずの3・4階の窓には「テナント募集」の看板が。



やられた。



気を取り直して、もうひとつの喫茶店へ。



踏切を越えて、ようやくたどり着いた路地裏。



そこにあるべき看板が・・・ない。



嘘だろう・・・と思いながら、もう歩く気力もほとんどなかったため、帰ることにする。



帰りの電車内でネットで調べて、それらの喫茶店が移転および閉店していたことを知り、3年くらい前のカフェ雑誌を頼って事前の情報収集をおろそかにしていた自分の愚かさを呪った。



だいたい、56年にもわたって常連さんに親しまれてきた喫茶店が、それが紹介されているカフェ雑誌が発売されてから実際に行くまでの短期間に閉店するほどの時代の変化って、どんなんだよ!とも思ったけど、およそ2年前に閉店していた喫茶店を目指していたぼくの情報源の信頼性欠如にも問題があった。



結局、行った記念写真のない喫茶店でのタルトの美味と、相変わらずの暑さと、シモキタの街のにぎやかさだけが記憶に残った。