地震大国ニッポン

「日本は世界に誇る地震大国である」もはやその言葉に反論する人はいないと思う。先日の大震災は、日本の経済やインフラが大混乱するほどの災害が起こる可能性が十分にあることを私たちに示してくれた。店内に入って他に客がいない率ほぼ0%のコンビニで、おにぎりやパンが全くない陳列棚を目の当たりにし、「こんなことってあるんだ」と愕然とした記憶がある。


でも、とふと高校時代を思い出す。高校時代、ぼくは「地学」の授業が大好きだった。小学校で初めて習った「地層」とか「岩石」といった分野の授業がやけに脳を刺激し、テストの成績は他の科目をしのいでダントツだった。その延長で、高校でさらに専門化した「地学」は、まさにぼくの得意科目となった。とくに好きなのが、先述した「岩石」とか「地層」とか「地震」とかそういったいわゆる「地質学」。それ以外の地学(天気がどうとか、白亜紀がどうとか、星座がどうとか)にはあまり興味はない。でも、「地質学」だけはなぜか身近で、かっこいい存在だった。火成岩の種類を「ハンセン刈り上げ」(ハン:斑れい岩 セン:閃緑岩 カ:花崗岩 リ:流紋岩 ア:安山岩 ゲ:玄武岩)と唱えながら暗記したのを思い出す。


その地学だが、Ⅰの授業は1年生のころにあったが、Ⅱの授業は、3年の時の理系クラスで、他の科目(物理Ⅱや化学Ⅱ)と同じく選択科目となっていた。ぼくは当然地学Ⅱを受ける気まんまんだったのだが、まわりの声を聞いて愕然。なんとだれも地学Ⅱを受ける人がいなかったのだ。理系の大学を受験するためには物理Ⅱと化学Ⅱを履修することが条件であるところが多いらしく、大半の友達は物理Ⅱと化学Ⅱを選択していた。その雰囲気に流されて地学Ⅱをあきらめ、「そこまでして地学を受けなくてもいいかな」なんて勝手に自分を正当化していた。実際、地学Ⅱを選択していた生徒はすごい少なかったんじゃなかったかな?


こうしてめちゃめちゃ難しい物理Ⅱと、難しいがまぁまぁ興味ある化学Ⅱをなんとか受け、大学受験に臨んだのだが、大学に入ってからも、「地学」という講義はなかった気がする。「天文学」はあったけど、じゃあなんで「地震学」とか「岩石学」というのはないんだ?なんて、当時はあまりツッコむ気もなかったけど、今冷静に思い返すと、それが不思議でならない。


地震大国で生活している日本人が、なんで「地震」のなんたるかを学ぶ機会が少ないのか、いまだにわからない。なんで理系の大学に進むにあたって物理と化学が幅をきかせ、地学は肩身の狭い思いをしているのか、ぼくは地学がかわいそうでならない。


いま、マグニチュード9という阪神大震災も上回る規模の地震を関東で体験し、社会の混乱にいまだにイライラしているくらいなのに、地震がどうして起こるのか、とか、地震予知はできるのか、とか、そういう話を聞く機会が少なかったため、いままでの教育にふと疑問をもった。ぼくが通ってた高校がそれなりの進学校で、大学受験に合格するためには地学は不要?だとしたら、地学をあまり重要視しない大学受験のシステムがおかしいし、2科目選択とせずに、物理Ⅱと化学Ⅱとあわせて地学Ⅱも選択できるようにしてもいいと思うのだが。どうですか、わが母校。


こうして今現在地震に対して記憶があいまいであることを高校時代のカリキュラムのせいにしたくもなりますが、その無知であることに焦りを感じ、この間この本を買いました。


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「大人のやりなおし中学地学」 左巻健男 サイエンス・アイ新書



「震度」と「マグニチュード」の違いは?
「地層」のできかた


など、高校時代のワクワクを思い出すようなモノ満載。


こういう本を読むと、学生時代に(文系学科の方であっても)少しでもこのような授業を受ける機会があれば、それなりに知識もついて、今回のような大災害があっても少しは混乱が収まる方向へ進むんじゃないかな、と思うのですが。


すこし話は飛躍するけど、原発の件だって、放射能をどれだけ理解したうえでパニックになっているのか、放射能を理解していないぼくでも不思議に思ってしまう。


なにをどう発想したら、会津ナンバーの車に「来るな」って落書きが書けるんだよ。(会津から来た車や人が放射線を発しているという確たる証拠をもったうえでの行動なのか?)


なにをどう発想したら、避難してきた転校生が、それが原因でいじめられるようになるんだよ(船橋市!!)。


大学時代、昔でいう同和地区(被差別部落)にまちづくりの勉強をしに行ったけど、これじゃもう差別の域に来てる気がする。


嘘か本当かわからない情報をうのみにして混乱してる(ような気がする)いま、本来日本で教えられてしかるべき知識と知恵をちゃんと教えてくれる教育を、これを機に考えてもらいたいです。


ちなみに、高校の地学の件は、この本を読んでて気づきました。


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「知的生産な生き方」 鎌田浩毅 東洋経済新報社


そこにはこう書かれています。


以下抜粋

「日本は先進国の中では随一の地震国・火山国です。それにもかかわらず高校で「地学」の教科を履修した学生は一割以下しかいません。そのため大学生の大半は、自然災害に関する知識が中学生レベルというのが現状です。近い将来に南海地震、首都直下型地震、富士山噴火などを控えている日本にとって、あまりにも無防備で危険きわまりない、と言わざるを得ません。」


著者は京大で火山学を教えるおしゃれ教授。


とても火山学者とは思えないが、火山学という一見マイナーな科学を身近なものとして一般人に広める態度は尊敬します。


火山学者という枠にとらわれずに、知的生産の方法論やコミュニケーション論についても考えていて、読書を通じて知識も豊富なのがスゴイ。


彼の本を読んでいると、もっと自信をもって高校時代に地学を勉強してればよかったと、すこし後悔します。



※5/3追記
大学時代の講義要覧を久しぶりに眺めていたら、「地学」の講義があり、しかも履修していたことを思い出しました。訂正するとともに、大学の講義がその後の社会人生活において記憶にほとんど残らないのだということを痛切に感じた出来事でした。