悪魔の嗜好品

「たばことコーヒーは悪魔の嗜好品」そんな言葉を、どこかで聞いた覚えがある。小説だっただろうか。ここ最近、知識不足による不安からいろんな本を浅く読んでいるため、その情報入手先が思い出せない(しかも検索もできない)。


これも何かの本で読んだことだが、「極端なお金の使い方をすべき」というのがあった。中途半端なお金の使い方をするから中途半端にしか自分の血肉とならない。自分のためになることには惜しまずにつぎ込み、それ以外にはびた一文払わない。そんな極端なお金の使い方がいいらしい。


ぼくはコーヒーは大好きだから、「悪魔の嗜好品」と言われることには異論がある。コーヒーはなくてはならない。仕事中、打合せの時間の少し前に余裕を持って目的地に着き、打合せ内容を整理するために喫茶店に入る事がある。そこで注文するアメリカンが美味しい。打合せ前の緊張したぼくの心と体に沁みこむ感じがまたいい。今はあまりにも暑くてあまり家で飲むことはないけど、真夏以外であれば、休日は家で10杯は飲むんじゃないかってくらいコーヒーが好きだ。


ぼくはお酒が苦手だ。というかめちゃくちゃ弱い。ビールジョッキ2杯で顔が真っ赤になり、頭が痛くなってきて、眩暈がしてくる。日本酒、焼酎、ワインなんてもってのほか。だいたい、日本酒と焼酎の区別がそもそもつかない。「醸造酒と蒸留酒の違いだろ」それくらいのことを「所さんの目がテン」で覚えたくらいだから、味の違いなんて分かるわけがない(そもそも比較しようと思わない。一口含んだだけで舌が焼けてしまうんだから)。そんなんだから、友達との楽しい居酒屋での会話も、酒が進むにしたがって、だんだん楽しくなくなってきてしまう。居酒屋で仲間とワイワイ騒ぐのに、果たしてアルコールを摂取することが絶対条件だろうか。ぼくは別にコーラでいいじゃないかと思う。いつの日か、会社の飲み会で「とりあえずコーラ」と堂々と言える日が来ることを切に願う。


ぼくはタバコは一切吸わない。というか吸えない。吸おうと思ったこともそもそもない。吸っている人をみてカッコいいと思った事がまずないから、「吸ってる人を見てカッコいいと思い、好奇心で吸い始めた」なんていう高校生のようなことにもならずに済んだ。成人式の日、久しぶりに会った中学時代の同級生に、試しに吸ってみてはと言われて試したが、むせてしまい、結局そのまま二度と吸わないことになった。それ自体は別に悔しくもなんともない。それよりも、タバコは口にくわえて息を吸った状態じゃないと火がつかないことすら知らず、友達に笑われた、そのことの方がつらかった。でも、それ以来今に至るまで吸ってないし、今後もほぼ間違いなく吸わないだろうから、その点では依存症にならずに済んでよかったと思う。


ぼくに言わせれば、「タバコとコーヒーは悪魔の嗜好品」ではなく、「酒とタバコは悪魔の嗜好品」だ。「なんでコーヒーはいいんだよ。コーヒーだって飲みすぎて依存してたら一緒じゃねぇ?それは自分勝手だ」と言われそうだ。でもぼくにとっては、タバコとコーヒーは全然違う。タバコは副流煙によって他人に害を与えるが、コーヒーを飲む限り他人にカフェインが伝染することはない。お酒を飲んで酔っ払って千鳥足になって他人に迷惑をかけることはあっても、コーヒーを飲みすぎてそうなることはない。自分の中だけで全て完結する点で、ぼくにとってコーヒーは悪魔の嗜好品になりえない。


他にも、一切やらない、というか体験したことがないことを挙げてみると、競馬、競艇、スロット、パチンコ(上司に連れられて一度だけやったことがあるけど、すぐにお金がなくなり、今後一切やらないとその日胸に誓った)、麻雀、宝くじなどなど、枚挙に暇がない。「真面目かっ」て決して褒め言葉と受け取れないようなことを言われそうだが、褒め言葉と受け取っておこう。


だから、今後もこれらのことには一切お金を使わないと決め込んでしまえば、少しは「極端なお金の使い方」を実践できるだろうか。


そのかわり、どんなにガキっぽいと言われようが、大好きなファミレスの料理とか、ラーメンとか、おかわり自由のやよい軒の定食とか、そういったものは食べたいと思ったときに食べて、心も体も満腹にしていきたい。あんまり将来にわたって血肉にはなりそうにないが。